【簿記2級 過去問解説】第153回 問3 パート1(商業簿記:連結精算表問題)
「簿記2級検定試験 2019年度 第153回 問3パート1(商業簿記:連結精算表問題)」です。(試験問題文は著作権上掲載できませんので、お手元にご用意ください。)
当記事「第153回問3パート1(商業簿記:連結精算表問題)」では、当問のキーポイントとなる連結修正仕訳の作成プロセスについて詳細な解説を行います。
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当問の前提情報
当問はでは、P社(親会社)とS社(子会社)の連結修正仕訳に必要な資料情報が与えられています。
資料情報を踏まえて作成する連結修正仕訳は下記のようになります。
上記の連結修正仕訳を作成するには、S社財務状況のタイムテーブルやP社-S社間の債権債務残高および取引高の相殺仕訳、開始仕訳(未実現利益)・実現仕訳を考える必要があります。
連結修正仕訳の作成はこの問題のキーポイントなので、これらの作成プロセスについてしっかりと理解しましょう。
タイムテーブルの作成プロセス詳細
S社財務状況のタイムテーブルは下記の様になります。
S社財務状況のタイムテーブルは、連結会計に必須の開始仕訳の作成に必須であり非常に重要なポイントなので、その作成プロセスを詳細に解説します。
資料1-(1)でS社の純資産情報(資本金、資本剰余金、利益剰余金)とP社のS社株取得原価が与えれていますので、まずはこれら情報を下記の様に、P社のS社支配権獲得時X0年4月1日〜連結第4年度末X4年3月31日までのタイムテーブルに転記します。
タイムテーブルは、P社がS社を支配した日X0年4月1日、連結精算表を作る期の前年度末X3年3月31日、連結精算表を作る当期末X4年3月31日を軸に作成します。
前準備が整ったら、順に各種計算を行いタイムテーブルの空欄を埋めていきます。
まずは、P社のS社株取得割合80%を踏まえてP社のS社資産持分を計算します。
次に、P社のS社株取得原価とP社のS社資産持分より、のれんを算出します。
のれんは20年にわたり定額法で償却すると資料に記載されているので、これを踏まえてのれん償却を算出します。(のれん償却を算出したことで、各時点ののれんも算出できます。)
次に、S社の個別財務諸表(連結第4年度:X3/4/1〜X4/3/31)の利益剰余金を読み取り、S社財務状況のタイムテーブルのX4年3月31日の利益剰余金に転記します。(併せて、S社X4/3/31の純資産合計も算出します)
続けて、S社の個別財務諸表(連結第4年度:X3/4/1〜X4/3/31)の当期純利益を読み取り、S社財務状況のタイムテーブルのX3年3月31日〜X4年3月31日の利益剰余金の増減額を表す欄に転記します。また、S社X3年3月31日の利益剰余金は、X4年3月31日の利益剰余金からS社X3年3月31〜S社X4年3月31の当期純利益を差し引いた金額なので、S社X3年3月31の利益剰余金も算出します。
以上よりX0年3月31日時点の利益剰余金とX3年3月31日時点の利益剰余金の情報がそろったので、X0年3月31日〜X3年3月31日の期間で発生した純利益を算出することができます。
最後に、各期間に発生した純利益の非支配株主持分を算出してS社財務状況のタイムテーブルは完成です。
このように非支配株主持分の純利益を算出するのは、当問が”アップストリーム“の問題だからです。
アップストリームとは、子会社(下)から親会社(上)へ上流(アップストリーム)へ向けて販売した取引という意味です。
アップストリームでは、子会社の未実現利益を消去するため、完全支配関係でない場合に非支配株主が関係します。
つまり、非支配株主に利益を配分させる仕訳が必要になります。
ダウンストリームとは、親会社(上)から子会社(下)へ下流(ダウンストリーム)へ向けて販売した取引という意味です。
ダウンストリームでは、親会社の未実現利益を消去するため非支配株主は関係しません。
そのため、非支配株主に利益を配分させる仕訳は必要ありません。
こうして作成したS社財務状況のタイムテーブルを用いて、当期(連結第4年度:X3年4月1日〜X4年3月31日)の開始仕訳を作成します。
まず、基礎知識として開始仕訳の基本型を把握しておきましょう。
資本金と資本剰余金期首残高は前期末の子会社の貸借対照表の金額(基本は支配獲得時の金額)になります。
諸資産・諸負債は、支配獲得時の子会社の資産・負債に係る評価差額の金額から前期末までに実現した金額を控除した金額になります。(ただ、簿記2級の試験で開始仕訳に諸資産・諸負債が出てくることはまれです。)
のれんは、前期末時点の未償却残高を計上します。
上記を踏まえ、S社財務状況のタイムテーブルより開始仕訳を作成します。まず、タイムテーブルの情報を転記するだけで埋められる情報を先に埋めましょう。
最後に、利益剰余金を算出すれば開始仕訳(X3年4月1日)は完成です。
タイムテーブルが完成したら、他の資料情報も踏まえて連結修正仕訳を作成していきます。
連結会計の問題はこうした前準備が非常に大変ですが、ひとつひとつの仕訳さえ確実にできれば得点源になる問題なので、頑張っていきましょう。
連結修正仕訳の作成プロセス詳細
まず、S社財務状況のタイムテーブルから読み取れる当期純利益の非支配株主配分と当期のれん償却の修正仕訳を作成します。
当仕訳のポイントは、”非支配株主に帰属する当期純利益“は借方に計上する点です。
「利益」とついているため貸方に計上するのが正しいように思えますが、親会社の利益が非支配株主の分だけ減るという観点でマイナスの利益とみなします。そのため、借方に計上するのです。
のれん償却は減価償却費なので、これまで通り費用勘定として借方に計上します。
土地の売却はP社からS社へとグループ会社内で行われたものであり、この未実現利益の消去をする修正仕訳を行う必要があります。
当期末においてS社がP社から仕入れた部品6,600千円の検収が未完了で未計上だったため、これを計上します。
問題文の資料3ー②に記載された一連の手形取引を下図に示します。
ポイントは、グループ外の仕入先に裏書譲渡した70,000千円については修正仕訳を行う必要がない点です。
銀行に割引された分は企業グループにとっての手形借入であると考え、借入金勘定に振り替えます。また、これに関して負担した割引料についても手形売却損勘定ではなく支払利息勘定に振り替えます。
資料にて、連結会社間の債権債務残高および取引高が下記の様に示されています。
これらのグループ内取引は未実現損益なので、相殺消去の仕訳が必要となります。相殺消去の仕訳は下記の様になります。(手形取引の修正仕訳は前述にて実施済み)
資料2,4,5では、連結第3年度末と連結第4年度末のグループ会社内で取引された”製品及び商品”、”原材料”、”付属機器Bの製造原価の構成”について、下記のような情報が示されています。
上記の情報を踏まえ、各年度の開始仕訳(未実現利益)と実現仕訳を行います。
まず、開始仕訳(連結第3年度末の未実現利益)を作成します。
未実現利益の仕訳ができたら、今度はそれらを相殺する実現仕訳を作成します。その際、未実現利益の利益剰余金勘定は実現仕訳の売上原価に振り替える点に注意しましょう。
次に、開始仕訳(連結第4年度末の未実現利益)の仕訳を作成します。
次に、棚卸資産に係る未実現利益(アップ・ストリーム)の開始仕訳(連結第3年度末の未実現利益)を作成します。
続けて、上記を当期末(連結第4年度)の実現仕訳に振り替えます。この際、利益剰余金は売上原価勘定に、非支配株主持分の利益剰余金は非支配株主に帰属する当期純利益に振り替えます。
最後に、当期末(連結第4年度)の未実現利益の仕訳を行います。
以上をまとめると、冒頭でも示した下記の連結修正仕訳が完成します。
以上、”簿記2級試験 第153回 問3パート1(商業簿記:連結精算表問題)“でした。
次回のパート2では、当記事で作成した連結修正仕訳を踏まえて解答・解説を行います。
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【簿記2級 過去問解説】第153回 問3 パート2(商業簿記:連結精算表問題)