【簿記2級 過去問解説】第156回 問3 パート1(連結貸借対照表:資産の部)

守る力

簿記2級検定試験 2020年度 第156回 問3パート1(連結貸借対照表:資産の部)解答・解説です。(試験問題文は著作権上掲載できませんので、お手元にご用意ください。)

各問の解答・解説に入る前に、まず当問題を解く上で重要な前提情報を把握しておきましょう。

問題の前提情報

当問題の前提情報を下記に示します。

資料1(試算表)

資料1では、X3年3月31日におけるP社(親会社)およびS社(子会社)の試算表が下記の通り前提情報として与えられています。

なお、上記試算表においてP社(親会社)決算整理残高試算表であるのに対し、S社(子会社)の試算表は決算整理後残高試算表である点に注意が必要です。

決算整理残高試算表前期末(当期首)残高を表し、前期に売れ残り当期へ持ち越された分を表します。

一方、決算整理後残高試算表は当期末残高を表し、当期の売れ残り次期へ繰り越す分を表します。

前者の決算整理残高試算表の場合、当期の決算整理仕訳を適用して、決算整理後残高資産表とする作業が必要になります

当問題では資料2にてP社の決算整理事項が示されており、これらの仕訳、すなわちP社の当期の決算整理仕訳を行い、決算整理前残高試算表にそれら仕訳情報を適用し、決算整理後残高試算表とする必要があります。

資料2(親会社の決算整理事項)

資料2には親会社P社の決算整理事項が示されており、それらの仕訳、すなわちP社の決算整理仕訳は下記の様になります。

なお決算整理事項(決算整理仕訳)とは、1年の取引を整理した後でしか仕訳できない事項です。そのため、わざわざ年度末の決算のタイミングでこのような事項を整理するのです。

資料3(親会社と子会社の連結に際して必要となる事項)

資料3では、親会社P社と子会社S社の連結に際して必要となる事項が示されています。

資料3の事項1〜3にはS社の資本に係るタイムテーブルの作成に必要な情報が記載されており、それらの情報を踏まえて作成したS社のタイムテーブルは下記の様になります。

また、事項1〜7の情報からグループ会社間の損益を削除するための連結修正仕訳を行います。

連結修正仕訳は下記の様になります。

以上の前提情報を踏まえ、各問の解答・解説を下記に示します。

問3パート1(連結貸借対照表:資産の部)の解答・解説

連結貸借対照表(資産の部)全体の解答・解説は下記の通りです。

続けて、各勘定科目の解答について個別に解説していきます。

問3-1:現金預金

現金預金(資産の部)の解答は下記の通りです。


現金預金勘定については、資料2・3に追加情報が無いため、すなおに試算表のP社・S社の現金預金を合算するだけでOKです。

問3-2:売掛金

売掛金(資産の部)の解答は下記の通りです。


売掛金については、P社の決算整理仕訳にある外貨売掛金の為替差益1,000千円を考慮する必要があります。

問3-3:貸倒引当金

貸倒引当金(資産の部)の解答は下記の通りです。


貸倒引当金については、まず当期のP社貸倒引当金繰入額を算出しなければなりません。

当期のP社貸倒引当金繰入額の算出の際は、外貨売掛金の為替差益1,000千円、子会社S社への売掛金7,000、当期末に残っている貸倒引当金1,900円を考慮する必要があります。

売掛金が増えればその分貸倒引当金も増えるので、決算整理事項などで売掛金の増減に関わる事項がないか注意するようにしましょう。

問3-4:商品

商品(資産の部)の解答は下記の通りです。


商品勘定については、グループ会社間の取引について相殺消去を行う必要があります。

期首商品の未実現利益900千円については、期末時点では売上原価に振り替えられるので、商品勘定の900千円は実現仕訳の際に相殺されます

そのため、連結貸借対照表(資産の部)の商品に計上される連結修正仕訳の商品勘定は、期末商品に関わる商品1,500千円のみになります。

問3-5:前払費用

前払費用(資産の部)の解答は下記の通りです。


前払費用の計算では10月1日に向こう1年分を支払っているため、X2年度10月1日〜X3年度3月31日の当期分だけでなく、未来のX3年度4月1日〜X3年度4月1日10月1日の6カ月分についても前払いで支払っていることになります。

この様な”前払い“は3年前から行われていることから、今年度X2年度4月1日〜X2年度4月1日10月1日の6カ月分も前払いされています

注意点は、前年度に前払いされたこの6カ月分が、今年度の支払リース料勘定で計上されることです。

これにより、支払リース料の前払い分を計算する際は支払リース料36,000千円を、X2年4月1日〜X3年10月1日の18カ月で割り、X3年4月1日〜X3年10月1日の6カ月分を算出することになります。

“1年分の支払リース料だから36,000円を12カ月で割る”ということをすると正しい計算ができませんので、注意しましょう。

問3-6:建物


建物勘定については、資料2・3に追加情報が無いため、すなおに試算表のP社・S社の建物勘定を合算するだけでOKです。

問3-7:建物減価償却累計額



P社の建物減価償却費は定額法を適用するので、取得価額耐用年数で割った金額を毎年均等に償却することになります。

そのため、前期末までの10年間と今年度の1年、合計11年分のP社建物減価償却累計額を計上します。

そして、連結貸借対照表ではP社とS社の合計額を計上します。

問3-8:備品


備品勘定については、資料2・3に追加情報が無いため、すなおに試算表のP社・S社の備品勘定を合算するだけでOKです。

問3-9:備品減価償却累計額



P社の備品減価償却費200%定率法を適用するので、取得価額耐用年数で割った倍率の200%の金額を、毎年償却することになります。

問3-10:土地



土地勘定は、グループ内の土地売却損を相殺消去するので、資産表の土地の金額に土地売却損の相殺分10,000円分が増額する形になります。

問3-11(のれん)



のれんについては、前提情報の資料3のS社のタイムテーブルで示した通り、総額142,000千円を10年かけて毎年14,200千円ずつのれん償却していく形になります。

そのため、2回目ののれん償却が行われるX2年度末では、のれん償却2回分の金額を総額から差し引いたのれん金額を計上します。

以上、”簿記2級試験 第156回 問3 パート1(連結貸借対照表:資産の部)“の解答・解説・ポイントでした。

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ではまた、次の問題の解答・解説でお会いしましょう(*´ω`)ノシ 

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【簿記2級 過去問解説】 第156回 問3 パート2(連結貸借対照表:負債・純資産の部)